コンサル業界への転職を考える中で、「ITコンサル」と「デジタルコンサル」という言葉をよく目にするのではないだろうか。両者は似たような響きを持つため、その違いを明確に理解できていない人も多いはずである。
実際、求人情報を見ても、ITコンサルとデジタルコンサルの業務内容が重なっているように見えることがある。また、企業によって定義が異なることもあり、より一層混乱を招いている現状がある。
この記事では、ITコンサルとデジタルコンサルの違いについて、具体例を交えながら詳しく解説していく。
ITコンサルとデジタルコンサルの違い
ITコンサルとデジタルコンサルは、一見すると似通った職種に見えるが、その本質的な役割と求められるスキルセットには明確な違いが存在する。
以下に主な違いを3つ挙げる。
- 支援の対象範囲:
ITコンサルはシステム導入・改善が中心
デジタルコンサルは経営戦略からの包括的なデジタル変革を支援 - 必要なスキル:
ITコンサルは技術的な専門性が重視される
デジタルコンサルはビジネス戦略立案能力と広範なデジタル知識が求められる - プロジェクトの性質:
ITコンサルは具体的なシステム構築プロジェクトが多い
デジタルコンサルは企業全体のデジタル戦略策定から関与する
これらの違いを理解することは、自身のキャリアプランを検討する上で非常に有用である。以下、それぞれの違いについて詳しく見ていこう。
支援の対象範囲の違い
ITコンサルタントが主に担当するのは、企業の情報システムに関する課題解決である。具体的には、業務システムの刷新や、新規システムの導入支援といった案件が多い。
顧客企業の情報システム部門や、システム子会社がメインのクライアントとなることが多く、技術的な観点からの提案や支援を行うことが求められる。
一方、デジタルコンサルタントは、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)全体を支援する。これには、デジタル戦略の策定から、組織体制の見直し、業務プロセスの再設計まで含まれる。
経営層や事業部門のトップがクライアントとなることも多く、経営戦略と密接に関連した提案が求められる。デジタル技術を活用した新規事業開発なども支援の対象となる。
このように、デジタルコンサルタントの方が、より広範な視点からの支援を行うことが特徴である。
必要なスキルの違い
ITコンサルタントには、情報システムに関する深い専門知識が求められる。具体的には、以下のようなスキルが重要となる。
- プログラミング言語やデータベースに関する知識
- システム設計・アーキテクチャに関する知識
- プロジェクトマネジメントスキル
- ITインフラに関する知識
- 情報セキュリティに関する知識
一方、デジタルコンサルタントには、より幅広いスキルセットが求められる。技術的な知識も必要だが、それ以上にビジネス視点での分析力や提案力が重要である。
デジタルコンサルタントに求められる主なスキルは以下の通りである。
- ビジネス戦略立案能力
- デジタル技術全般に関する幅広い知識
- 組織変革マネジメントスキル
- イノベーション創出のための思考力
- ステークホルダーマネジメント能力
このように、求められるスキルセットには明確な違いがある。自身の強みや興味に合わせて、キャリアプランを検討することが望ましい。
プロジェクトの性質の違い
ITコンサルタントが携わるプロジェクトは、比較的スコープが明確である。システムの導入や刷新といった、具体的な目標を持つプロジェクトが多い。
また、プロジェクトの期間も比較的明確で、システム開発の工程に沿って進められることが多い。成果物も具体的で、例えば以下のようなものがある。
- 要件定義書
- システム設計書
- テスト計画書
- 運用設計書
- 移行計画書
一方、デジタルコンサルタントのプロジェクトは、より探索的な性質を持つ。企業全体のデジタル変革という大きな目標に向けて、段階的にアプローチしていくことが多い。
プロジェクトの期間も比較的長期にわたることが多く、以下のような成果物を段階的に作成していく。
- デジタル戦略ロードマップ
- 組織変革計画書
- ビジネスモデル設計書
- デジタル人材育成計画
- 新規事業企画書
このように、プロジェクトの性質や進め方にも大きな違いがある。
転職先として検討する際の注意点
転職先としてITコンサルやデジタルコンサルを検討する際、「技術の専門性を深めたい」という考えから、ITコンサルを選択する人も多いだろう。確かに、特定の技術領域でのキャリアを築きたい場合は、ITコンサルは魅力的な選択肢となる。
しかし、近年のビジネス環境において、デジタル化への対応は企業の生命線となっている。そのため、デジタルコンサルタントとしてのキャリアも、長期的には大きな可能性を秘めている。
また、ITコンサルでキャリアをスタートし、その後デジタルコンサルへとステップアップするというキャリアパスも十分に考えられる。技術的な専門性を持ちつつ、より広い視野でビジネスに関わっていくことができる。
むしろ、最初から「どちらか一方」と決めつけず、自身の興味や適性、市場の動向を見極めながら、柔軟にキャリアを考えていくことが望ましい。
長期的なキャリア構築という観点では、両者の特徴をよく理解した上で、段階的にスキルを積み上げていく戦略が有効だろう。
まとめ:適性を見極めて選択を
ITコンサルとデジタルコンサルの違いは、支援の対象範囲、必要なスキル、そしてプロジェクトの性質という3つの観点から明確に区別することができる。
どちらを選択するにせよ、自身の適性や興味との相性を十分に見極めることが重要である。また、転職後のキャリアパスについても、長期的な視点で検討することをお勧めする。
最後に強調しておきたいのは、これらは必ずしも二者択一の関係にはないということである。両者の特徴をよく理解した上で、自身のキャリアを柔軟に設計していってほしい。