近年、AI技術の急速な発展により、多くの職業の将来性に疑問が投げかけられている。とりわけ知的労働を主とする職種への影響は大きく、コンサルタントという職業もその例外ではない。
ITコンサルタントを目指している人々の中には、「せっかく転職しても、数年後にはAIに仕事を奪われてしまうのではないか」「高度な専門性を身につけても、それがすぐに陳腐化してしまうのではないか」といった不安を抱える人も少なくないだろう。
このような不安は決して杞憂とは言えない。そこで今回は、ITコンサルタントという職業の将来性について、現在の市場動向やテクノロジーの進化を踏まえながら、具体的に検討していく。
ITコンサルは今後なくなる職業
確かに、ITコンサルタントという職業は、今後大きな変革を迎えることになる。その主な理由として、以下の3つのポイントを挙げることができる。
- AIによる分析・提案能力の向上により、従来型のコンサルティングの価値が低下
- クラウドサービスの進化により、システム導入の障壁が大幅に低下
- クライアント企業のDX人材の内製化が進展
これらの要因により、従来型のITコンサルタントの需要は確実に減少していくと予測される。以下、それぞれの要因について詳しく見ていこう。
AIによる分析・提案能力の向上
現在のAI技術は、膨大なデータを分析し、そこから意味のある示唆を導き出す能力において、人間の能力を凌駕しつつある。この傾向は今後さらに加速することが予想される。
従来のITコンサルタントの重要な役割の一つは、クライアント企業の現状分析とソリューションの提案だった。例えば、業務プロセスの非効率性を特定し、それを解決するための最適なITシステムを提案するといった業務である。
しかし、AI技術の発展により、これらの業務の多くは自動化される可能性が高い。実際に、ビジネスプロセスの分析や最適化提案を行うAIツールはすでに実用化され始めている。
さらに、AIは24時間365日稼働可能で、人間よりも圧倒的に多くのデータを処理できる。また、過去の成功事例や失敗事例を学習することで、より精度の高い提案が可能になっている。
このような状況下では、単なる分析や提案だけを行うITコンサルタントの存在価値は著しく低下せざるを得ない。
クラウドサービスの進化
クラウドサービスの進化も、ITコンサルタントの役割を大きく変える要因となっている。特に、ローコード・ノーコードプラットフォームの発展は、システム導入のハードルを大幅に下げている。
従来は、新しいITシステムの導入には専門的な知識と経験が必要とされ、それゆえにITコンサルタントの存在が不可欠だった。しかし、現在では多くのシステムがクラウドサービスとして提供されており、その導入や運用が格段に容易になっている。
例えば、ERPシステムやCRMシステムといった、かつては導入に多大な時間と労力を要したシステムも、現在ではSaaSとして提供されており、比較的短期間で導入が可能になっている。
また、クラウドサービスのベンダー各社は、詳細なドキュメントやトレーニング教材を提供しており、クライアント企業が自力でシステムを導入・運用するためのサポート体制も整っている。
このような環境変化により、システム導入におけるITコンサルタントの役割は、従来に比べて大幅に縮小せざるを得ない状況になっている。
クライアント企業のDX人材内製化
もう一つの重要な要因は、クライアント企業による人材の内製化である。多くの企業が、デジタルトランスフォーメーション(DX)を経営の最重要課題と位置づけ、社内にDX人材を抱えるようになっている。
このトレンドは、以下のような背景から加速している。
- 外部コンサルタントへの依存によるコスト負担の増大
- プロジェクト終了後の運用・保守における課題
- 自社のビジネスに精通した人材によるDX推進の必要性
- 継続的なイノベーションを実現するための組織能力の強化
実際に、多くの大手企業では、CDO(チーフ・デジタル・オフィサー)の設置やDX推進部門の設立が進んでおり、かつてITコンサルタントが担っていた役割の多くを内製化している。
このような動きは、単にコスト削減のためだけではなく、デジタル技術を自社の競争力の源泉とするための戦略的な判断に基づいているのである。
これからのITコンサルタントに求められる変革
ここまで述べてきた状況を踏まえると、「ITコンサルタントはもはや不要である」という結論に至るかもしれない。しかし、この認識は必ずしも正確ではない。
確かに、従来型の役割は縮小していくだろう。しかし、それは同時に新しい役割が生まれる機会でもある。むしろ、以下のような新しい価値を提供できるITコンサルタントこそが、今後ますます重要になっていく。
- 経営戦略とテクノロジーを結びつける「ブリッジ人材」としての役割
- 複雑な利害関係の調整や組織変革の推進
- 最新テクノロジーの活用可能性の探索と実験的な取り組みの支援
これらの役割を果たすためには、従来のITコンサルタントとは異なるスキルセットが必要となる。技術的な知識はもちろんのこと、ビジネスへの深い理解、組織変革のノウハウ、そしてイノベーションを推進する能力が求められるのである。
まとめ:ITコンサルタントの未来に向けて
ITコンサルタントという職業は、確かに大きな変革期を迎えている。従来型の役割は、AIやクラウドサービスの進化、そしてクライアント企業の内製化により、その多くが代替されていく可能性が高い。
しかし、それは職業としてのITコンサルタントが完全になくなることを意味するわけではない。むしろ、テクノロジーの進化がもたらす変化の中で、より高度な価値を提供できる新しいタイプのITコンサルタントへと進化していく必要があるのである。
このような変革期にこそ、自身のキャリアの方向性を真剣に考え、必要なスキルの獲得に向けて積極的に行動を起こすことが求められている。それこそが、ITコンサルタントとして生き残り、さらには成長していくための唯一の道なのである。