ITコンサルが身に付けておくべきドキュメント作成のお作法

コンサル転職コラム

ITコンサルタントとして働き始めると、想像以上にドキュメント作成に時間を取られることに戸惑いを感じる人は少なくない。「もっと本質的な仕事に時間を使いたいのに」「こんなに資料作りに時間を取られるとは思わなかった」といった声が聞かれる。

実際、クライアントへの提案資料、プロジェクト計画書、要件定義書、進捗報告書など、作成すべきドキュメントは数多い。しかも、その内容は専門的かつ複雑で、作成には相応の時間と労力を要する。

一方で、期限に追われる中でドキュメントの質を保つことは容易ではなく、特に経験の浅いコンサルタントにとっては大きな課題となっている。

そこで今回は、ITコンサルタントとして必要不可欠なドキュメント作成のお作法について、実践的な観点から解説する。

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ITコンサルが身に付けておくべきドキュメント作成のお作法

効率的かつ効果的なドキュメント作成のために、ITコンサルタントは以下の3つの基本原則を押さえておく必要がある。

  • ドキュメントの目的と読み手を明確にした構成設計
  • 論理的な文章構成と分かりやすい表現技法の活用
  • 再利用可能なテンプレートとナレッジの蓄積

それでは、これらの原則について詳しく見ていこう。

目的と読み手を明確にした構成設計の重要性

ドキュメント作成において最も重要なのは、その目的と読み手を明確に意識することである。これは、ドキュメントの構成や内容、表現方法を決定する上での基本となる考え方だ。

例えば、経営層向けの提案書と技術者向けの設計書では、盛り込むべき情報の粒度や説明の仕方が大きく異なる。経営層には、投資対効果や事業へのインパクトを簡潔に示す必要がある一方、技術者には具体的な実装方針や技術的な制約事項を詳細に記述しなければならない。

また、ドキュメントの目的によっても、構成や記述の方針は変わってくる。意思決定を求める提案書であれば、結論から述べた上で根拠を示す構成が効果的だ。一方、プロジェクトの進捗報告書であれば、現状の説明から始めて課題と対策を述べる流れが自然となる。

読み手の立場や知識レベルを考慮することも欠かせない。専門用語や略語を多用すると、読み手によっては理解が困難になる可能性がある。必要に応じて用語集を添付したり、図表を活用して視覚的な理解を促したりする工夫も必要だ。

さらに、ドキュメントの利用シーンも想定しておく必要がある。会議の場で議論のベースとして使用されるのか、それとも後日の参照用として保管されるのか。これによって、記述の詳細度や補足情報の充実度を調整することができる。

論理的な文章構成と分かりやすい表現技法の実践

ドキュメントの質を高めるためには、論理的な文章構成と分かりやすい表現技法の習得が不可欠である。以下に、実践すべきポイントを示す。

  • 主張と根拠の明確な対応付け
  • 段落ごとの論点の明確化
  • 適切な見出しと階層構造の設定
  • 図表やグラフの効果的な活用
  • 箇条書きやナンバリングによる情報の整理

文章を書く際は、1つの段落に1つの論点を収めることを心がける。複数の話題を1つの段落に詰め込むと、読み手の理解を妨げる原因となる。

また、段落間のつながりにも注意を払う必要がある。論理の飛躍がないよう、適切な接続詞を用いて文章をつなぎ、スムーズな読み進めを実現する。

情報の優先順位付けも重要だ。読み手が最も知りたい情報から順に記述することで、効率的な情報伝達が可能となる。特に経営層向けのドキュメントでは、この点に留意する必要がある。

長文になる場合は、適切な見出しを付けて文章を分割することで、読みやすさを向上させることができる。見出しは内容を端的に表現し、階層構造を明確にすることが望ましい。

テンプレートとナレッジの効率的な活用と蓄積

ドキュメント作成の効率を高めるためには、テンプレートとナレッジの活用が有効である。以下に、具体的な実践方法を示す。

  • 社内の優良事例を参考にしたテンプレートの作成
  • プロジェクト種別ごとの定型文や図表の整備
  • 過去のドキュメントの再利用可能な部分の特定
  • 業界特有の用語や表現のリスト化
  • レビュー指摘事項のデータベース化

テンプレートは、単なる形式的な雛形ではなく、ドキュメントの品質を確保するためのガイドラインとしても機能する。必要な項目の漏れを防ぎ、一定の品質水準を保つことができる。

また、過去のプロジェクトで作成したドキュメントは、貴重なナレッジの源となる。特に成功事例として評価された提案書や報告書は、表現方法や構成の参考として活用できる。

定型的な説明や図表についても、再利用可能な形で整理しておくことが効率化につながる。ただし、コピー&ペーストする際は、プロジェクトの特性や状況に応じて適切にカスタマイズすることを忘れてはならない。

さらに、レビューで指摘された事項を蓄積し、チェックリスト化することで、同じような指摘を受けることを防ぐことができる。これは、ドキュメントの品質向上と作成時間の短縮の両面で効果を発揮する。

効率化と品質のバランスを考える

「とにかく効率よく作成したい」「完璧な資料を作りたい」という考えは理解できる。しかし、ドキュメント作成において、効率性と品質は時としてトレードオフの関係になることがある。

例えば、テンプレートを活用すれば確かに作成時間は短縮できる。しかし、安易なコピー&ペーストは、かえって読み手の理解を妨げる原因となりかねない。また、完璧を求めすぎるあまり、締切に間に合わないというリスクも存在する。

このような状況に対して、最適な解決策は「目的に応じた品質レベルの設定」である。全てのドキュメントを同じレベルで作り込む必要はない。重要な意思決定に関わる提案書には十分な時間をかけ、日常的な進捗報告には効率性を重視するなど、メリハリをつけることが大切である。

また、チーム内でのレビュー体制を整備することで、個人の負担を軽減しながら品質を確保することも可能だ。経験豊富なメンバーからのフィードバックは、ドキュメントの質を高めるだけでなく、作成者のスキル向上にもつながる。

このように、効率化と品質のバランスを取りながら、プロジェクトの成功に貢献するドキュメント作成を目指すべきである。

結論:ドキュメント作成は ITコンサルタントの重要なスキル

ITコンサルタントにとって、ドキュメント作成は避けて通れない業務である。むしろ、それは専門家としての価値を示す重要な機会といえる。

優れたドキュメントは、クライアントとの信頼関係を強化し、プロジェクトの成功確率を高める。そのためにも、目的と読み手を意識した構成設計、論理的な文章構成、効率的なナレッジ活用という3つの基本原則を意識して、継続的なスキル向上に取り組むことが求められる。

最後に強調しておきたいのは、ドキュメント作成のスキルは一朝一夕には身につかないということだ。日々の実践と振り返りを通じて、着実にレベルアップを図っていくことが、プロフェッショナルとしての成長につながるのである。