ITコンサル業の産業分類についてわかりやすく解説

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コンサルタント業界への転職を検討する中で、「ITコンサル業」という業態がどの産業に分類されるのか、悩んでいる方は少なくないだろう。

求人情報を見ても、「情報サービス業」「専門サービス業」「経営コンサルタント業」など、さまざまな分類が見られる。

実際、ITコンサル業は複数の産業分野にまたがる特殊な業態である。その特徴を理解することは、転職活動における企業選びや、将来のキャリアパスを考える上で非常に有益な視点となる。

そこで本記事では、ITコンサル業の産業分類について、実務的な観点から解説していく。

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ITコンサル業の産業分類

ITコンサル業の産業分類を理解する上で、まず押さえておくべきポイントがある。以下に3つの重要な視点を示す。

  • 日本標準産業分類における「情報サービス業」と「経営コンサルタント業」の2つの分類が関係する
  • 企業の事業ポートフォリオや売上構成によって、どちらの分類に該当するかが決まる
  • 実務上は「主たる事業」の判定基準として、収益構造や人材構成が重視される

これら3つの視点について、順を追って詳しく見ていこう。

日本標準産業分類における位置づけ

日本標準産業分類は、国内の経済活動を体系的に分類する基準として、統計調査や経済分析などで広く活用されている。ITコンサル業に関連する分類を見ていくと、興味深い特徴が浮かび上がる。

まず「情報サービス業」は、大分類「情報通信業」の下位に位置づけられている。この分類には、受託開発やシステムインテグレーション、さらにはIT戦略の立案支援なども含まれる。

一方、「経営コンサルタント業」は、大分類「学術研究、専門・技術サービス業」の下位に分類される。経営戦略の策定支援や業務改革の提案など、経営上の助言を行うサービスが該当する。

ITコンサル業は、この2つの分類の境界線上に位置する業態である。デジタル化が進む現代において、経営戦略とIT戦略は密接に結びついており、両者を切り離して考えることは難しい。

このような産業分類上の特徴は、ITコンサル業の独自性を示すものでもある。従来の産業分類の枠組みでは十分に捉えきれない、新しいビジネスモデルとして発展してきたと言える。

事業ポートフォリオによる分類

個々の企業がどちらの産業分類に該当するかは、そのビジネスモデルや事業構成によって判断される。この点について、具体的な判断基準を見ていこう。

情報サービス業に分類される企業の典型的な特徴として、以下のような点が挙げられる。

  • システム開発やインフラ構築が売上の大半を占める
  • プロジェクトの実行フェーズ(要件定義、設計、開発など)に重点がある
  • エンジニアやプロジェクトマネージャーが人員の中心を占める
  • 保守運用や技術サポートなど、継続的なサービス提供がある

一方、経営コンサルタント業に分類される企業では、次のような特徴が見られる。

  • 戦略立案や業務改革の提案が主要な収益源となる
  • プロジェクトの構想フェーズ(企画、計画立案など)が中心である
  • 経営コンサルタントやビジネスアナリストが主力となる
  • 短期的かつ高付加価値のアドバイザリー業務が多い

これらの特徴は、企業の成り立ちや事業戦略と密接に関連している。特に、ITベンダーから発展した企業と、コンサルティングファームから派生した企業では、異なる傾向が見られる。

収益構造と人材構成の実態

実務上の産業分類を決定する上で、最も重視されるのが収益構造と人材構成である。この2つの要素は、企業の事業特性を最も端的に表すものと言える。

収益構造の観点では、以下のような指標が判断材料となる。

  • プロジェクト単価の水準と設定方法
  • 工数ベース課金と成果報酬の比率
  • リカーリングレベニューの有無と程度
  • 外注費や材料費の売上高に対する比率

人材構成については、次のような点が重要となる。

  • コンサルタントとエンジニアの比率
  • 新卒採用と中途採用の割合
  • 求められる資格やスキルセット
  • キャリアパスの設計方針

これらの要素は、企業の事業戦略や組織文化とも密接に関連している。例えば、高度な専門性を持つコンサルタントを多く抱える企業では、必然的に高単価のアドバイザリー業務が中心となる。

産業分類の実務的な意味

ここまで見てきた産業分類の違いは、実務面でどのような意味を持つのだろうか。この点について、実践的な観点から考えてみたい。

確かに、産業分類はあくまでも形式的な区分であり、実際の仕事の進め方は個々のプロジェクトの性質によって決まるという見方もある。また、デジタル化の進展に伴い、従来の産業分類の枠組みでは捉えきれない新しいビジネスモデルも登場している。

しかし、産業分類の違いは、組織の評価基準や人材育成方針に大きな影響を与える。例えば、情報サービス業に分類される企業では、技術力やプロジェクト管理能力が重視される一方、経営コンサルタント業では、分析力や提案力が評価の中心となる。

また、クライアントとの関係性や、プロジェクトの進め方にも違いが生じる。情報サービス業では長期的な関係性を前提としたプロジェクト型の業務が多いのに対し、経営コンサルタント業では比較的短期で明確な成果を求められるケースが多い。

結論:産業分類を活用したキャリア戦略

ITコンサル業の産業分類は、転職先選びやキャリア形成を考える上で、実践的な示唆を与えてくれる。

それぞれの分類には固有の特徴があり、自身の適性や志向性との相性を見極めることが重要である。例えば、技術的な専門性を活かしたいのか、それとも経営的な視点からの提案力を磨きたいのか、という点は大きな判断材料となる。

最後に強調したいのは、産業分類の違いは優劣を示すものではないという点である。重要なのは、自身のキャリアビジョンと各企業の特性との適合性を見極め、その上で主体的な選択を行うことである。