近年、企業のデジタルトランスフォーメーション（DX）の推進に伴い、コンサルタントの需要が高まっている。特にIT領域とWEB領域においては、その専門性の高さから、多くの企業がコンサルタントの支援を必要としている状況である。
しかし、ITコンサルタントとWEBコンサルタントは似て非なる職種であり、転職を考える際にはその違いを正確に理解しておく必要がある。
実際、多くの転職希望者が「ITコンサルタントになりたいが、WEBコンサルタントとの違いがわからない」「自分の経験やスキルセットがどちらに向いているのかわからない」といった悩みを抱えている。
そこで、この記事ではITコンサルタントとWEBコンサルタントの違いについて、実務内容や求められるスキル、キャリアパスの観点から詳しく解説する。
ITコンサルとWEBコンサルの違い
ITコンサルタントとWEBコンサルタントは、一見すると似たような職種に思えるが、実際には業務内容や求められるスキルセット、そして支援対象となる領域が大きく異なる。以下に主な違いをまとめる。
- 業務領域の違い
ITコンサルはシステム全体の設計や業務改革を担当
WEBコンサルはウェブサイトやデジタルマーケティングに特化 - 求められる専門性の違い
ITコンサルは情報システムやIT基盤に関する深い技術知識が必要
WEBコンサルはマーケティングとウェブ技術の知識が求められる - プロジェクト規模の違い
ITコンサルは数億円規模の大規模プロジェクトが多い
WEBコンサルは比較的小規模なプロジェクトが中心
これらの違いを詳しく見ていこう。
業務領域の違い
ITコンサルタントの業務は、企業の情報システム全体に関わる広範な領域をカバーしている。具体的な業務内容は以下の通りである。
- 基幹システムの刷新・統合プロジェクトの立案と推進
- クラウド移行戦略の策定とプロジェクト管理
- 社内システムのセキュリティ強化施策の提案
- 業務プロセスの分析と改善提案
- システム導入に伴う組織変革（チェンジマネジメント）
一方、WEBコンサルタントは主にウェブサイトやデジタルマーケティングに関する領域に特化している。具体的には以下のような業務を行う。
- ウェブサイトの分析と改善提案
- SEO・MEO対策の立案と実行
- デジタル広告施策の企画と運用
- コンテンツマーケティング戦略の策定
- ソーシャルメディアマーケティングの企画・実施
このように、両者は「IT」という大きな枠組みの中で活動しているものの、その焦点は大きく異なる。ITコンサルタントがビジネスプロセス全体の効率化や改善を目指すのに対し、WEBコンサルタントは主にマーケティング活動の最適化に注力する。
ITコンサルタントの場合、社内の業務システムや基幹システムといった、企業の事業継続に直結するシステムを扱うことが多い。そのため、システムの停止や不具合が企業活動に重大な影響を及ぼす可能性があり、高度な専門知識と慎重な判断が求められる。
また、ITコンサルタントはしばしば複数の部門や事業部を横断する大規模なプロジェクトに携わることが多く、さまざまなステークホルダーとの調整能力も必要となる。
これに対してWEBコンサルタントは、主にマーケティング部門や広報部門との協働が中心となり、比較的シンプルな体制でプロジェクトを進めることができる。
求められる専門性の違い
ITコンサルタントには、以下のような専門知識とスキルが求められる。
- データベース設計・管理に関する知識
- ネットワークアーキテクチャの理解
- システム間連携・API設計の知識
- プロジェクトマネジメントスキル
- 業務分析・設計手法の理解
これらの知識は、単なる表面的な理解ではなく、実際のシステム構築や運用に活用できるレベルまで深めておく必要がある。
一方、WEBコンサルタントに求められる専門知識とスキルは以下の通りである。
- ウェブアナリティクスの知識と活用力
- デジタル広告の運用スキル
- コンテンツマーケティングの知識
- UX/UIデザインの理解
- SNSマーケティングのノウハウ
WEBコンサルタントの場合、技術的な深さよりも、マーケティング施策の効果測定や改善提案ができる実践的なスキルが重視される。
ITコンサルタントは、システムの内部構造や技術的な制約を理解した上で、最適なソリューションを提案する必要がある。そのため、プログラミングやシステムアーキテクチャに関する知識は必須である。
一方、WEBコンサルタントは、ユーザー行動の分析や競合分析を通じて、効果的なマーケティング戦略を立案することが求められる。技術的な知識よりも、データ分析力やマーケティングセンスが重要となる。
プロジェクト規模の違い
ITコンサルタントが携わるプロジェクトには、以下のような特徴がある。
- プロジェクト期間は通常1年以上
- 予算規模は数億円から数十億円
- プロジェクトメンバーは数十名規模
- 複数の部門や事業部が関与
- システムベンダーとの協業が必須
このような大規模プロジェクトでは、プロジェクトマネジメントの重要性が増し、リスク管理や品質管理にも細心の注意を払う必要がある。
対してWEBコンサルタントのプロジェクトは、以下のような特徴を持つ。
- プロジェクト期間は3ヶ月から半年程度
- 予算規模は数百万円から数千万円
- プロジェクトメンバーは数名から十数名
- マーケティング部門が主な窓口
- 制作会社やデザイン会社との協業
WEBコンサルタントのプロジェクトは比較的小規模であり、機動的な意思決定と迅速な実行が可能である。また、成果も短期間で測定できることが多い。
ITコンサルタントの場合、システムの導入や刷新には慎重な準備と段階的な展開が必要となる。また、システムの安定稼働を確認するまでに相当の期間を要することも多い。
一方、WEBコンサルタントのプロジェクトは、施策の効果を見ながら柔軟に方向性を調整できる。PDCAサイクルを短期間で回すことが可能であり、市場の変化にも素早く対応できる。
キャリアパスの選択について
「ITコンサルタントを目指すべきか、WEBコンサルタントを目指すべきか」という質問をよく耳にする。確かに、両者ともにデジタル領域で活躍できるキャリアパスであり、どちらを選択するかは悩ましい問題である。
しかし、この選択は個人の適性や志向性によって決めるべきである。たとえば、技術的な課題解決に興味があり、大規模なシステム構築に携わりたい人はITコンサルタントが向いているだろう。
逆に、マーケティングや顧客体験の改善に関心があり、成果を短期間で形にしたい人には、WEBコンサルタントの道が適している可能性が高い。
また、将来のキャリアの方向性も考慮に入れる必要がある。ITコンサルタントは、CIOやIT部門長といった技術部門のマネジメント職を目指すことができる。一方、WEBコンサルタントは、CMOやマーケティング部門長として活躍する道が開けている。
まとめ
ITコンサルタントとWEBコンサルタントは、どちらもデジタル時代に欠かせない職種である。ITコンサルタントは、企業の基幹システムや業務プロセスの改革を担い、WEBコンサルタントは、デジタルマーケティングを通じた事業成長を支援する。
両者の役割は明確に異なるものの、どちらも企業のデジタル化推進において重要な存在である。キャリアパスの選択に際しては、自身の興味や適性、目指すべきポジションを見据えた上で判断することが望ましい。
デジタルトランスフォーメーションの波は今後も続くと予想され、両職種とも需要は増加傾向にある。自身の志向性や市場のニーズを見極めながら、キャリアの方向性を決めていってほしい。
