「インド株やめとけ」の裏に道あり花の山。買いの理由3選

インド株への投資を検討しているあなたは、きっと「やめとけ」という警告の声に戸惑っていることでしょう。確かに2024年9月の最高値から大幅調整し、トランプ関税50%という衝撃的な数字まで飛び出した今、不安を感じるのは当然かもしれません。

そこで今回は、「やめとけ」と言われる理由を冷静に分析したうえで、その裏側に隠された投資機会を3つの観点から探っていきます。実は今こそ、長期投資家にとって絶好の仕込み時である可能性が高いのです。

インド株が「やめとけ」と言われる3つの理由

  • トランプ関税50%の衝撃と海外投資家の大量売却
  • 割高なバリュエーションと6週連続下落の現実
  • 企業業績の減速懸念とルピー安の進行

トランプ関税50%の衝撃と海外投資家の大量売却

2025年8月、トランプ政権がインド製品への関税を50%に引き上げると発表した衝撃は、市場参加者の記憶に新しいところです。この発表を受けて、海外投資家は年初来で約150億ドルという記録的な規模でインド株から資金を引き揚げており、まさに総悲観の様相を呈しています。

さらに追い打ちをかけたのが、BofA(バンク・オブ・アメリカ)の調査結果でした。わずか3カ月前にはアジア株式市場でトップ評価だったインド株が、一転して最下位に転落し、運用責任者の30%が「アンダーウェート」と回答したという衝撃的な内容だったのです。

ロシア産原油の購入を理由とした制裁的な意味合いも含まれており、地政学リスクが改めて浮き彫りになりました。こうした状況を見れば、「インド株はやめとけ」という声が高まるのも無理はないでしょう。

割高なバリュエーションと6週連続下落の現実

インド株式市場の予想PERは、ピーク時の25倍から低下したとはいえ、依然として18~21倍という高水準を維持しています。これは他のアジア新興国と比較しても際立って高く、割高感が払拭されていないことを示しています。

実際、2025年初頭にはコロナ禍以降で最長となる6週連続の下落を記録し、時価総額にして約192兆円が吹き飛びました。SENSEX指数は2024年9月の85,836ポイントから一時73,000ポイントを割り込むなど、調整の深さは想像以上でした。

中国株への資金シフトも顕著で、7月には中国株がインド株を約8ポイント上回るパフォーマンスを記録しています。投資家心理の冷え込みは数字にはっきりと表れており、楽観論を唱えるには時期尚早という見方が大勢を占めているのです。

企業業績の減速懸念とルピー安の進行

2024年10-12月期の決算発表では、コンセンサス予想を下回る企業が相次ぎ、成長鈍化への懸念が一気に高まりました。今年度のGDP成長率も6.5%と4年ぶりの低水準にとどまる見通しで、過去3年間の平均9%成長から大きく減速することが確実視されています。

インドルピーも対ドルで過去最安値圏の87ルピー台まで下落し、輸入インフレの懸念が再燃しています。インド準備銀行は景気支援のために利下げを実施したいところですが、通貨防衛との板挟みで身動きが取れない状況に陥っているのです。

都市部の消費も力強さを欠いており、実質金利の高止まりが企業の設備投資意欲を削いでいます。こうした負の連鎖を前に、多くの投資家が「今はインド株を避けるべき」と判断するのも理解できる状況といえるでしょう。

逆張りで見えてくる買いの理由3選

  • 国内投資家の圧倒的な買い越しが示す本質的価値
  • 利下げサイクル突入による成長加速シナリオ
  • 内需主導型経済の強靭性とIT産業の競争力

国内投資家の圧倒的な買い越しが示す本質的価値

興味深いことに、海外投資家が大量売却する一方で、インド国内の機関投資家と個人投資家は積極的な買い増しを続けています。2025年7月には株式特化型投資信託への資金流入が過去最高の4270億ルピー(約7200億円)を記録し、国内投資信託の保有比率は史上最高水準に達しました。

これは単なる愛国的な買い支えではなく、インド経済の実態を最もよく知る国内投資家が、現在の株価水準を絶好の買い場と判断している証左といえるでしょう。実際、過去の危機局面でも国内投資家の買いが相場の底打ちを支え、その後の大幅上昇につながったケースが数多く存在します。

金融資産への資金シフトという構造的な流れも続いており、金や不動産から株式への資産配分の変更が着実に進行しています。海外投資家の保有比率が10年ぶりの低水準まで低下した今、彼らの買い戻しが始まれば、需給面から強力な上昇圧力が働くことは間違いありません。

利下げサイクル突入による成長加速シナリオ

2025年2月にインド準備銀行が約5年ぶりの利下げに踏み切ったことは、今後の相場展開を占う上で極めて重要な転換点となりました。過去の利下げ局面を振り返ると、インド株は例外なく大幅上昇を記録しており、今回も同様のパターンが期待できます。

4月には追加利下げとともに金融政策スタンスを「中立」から「緩和」へと転換し、年内合計50ベーシスポイントの利下げが予想されています。これにより都市部の消費回復と企業の設備投資再開が見込まれ、2025年後半から2026年にかけて成長率の再加速が現実味を帯びてきました。

モディ政権も所得減税や消費刺激策など景気支援型の政策を相次いで打ち出しており、財政・金融両面からの強力な後押しが期待できます。利下げによる通貨安も、IT産業など輸出競争力の向上につながるため、必ずしもマイナス要因ではないという見方も広がっています。

内需主導型経済の強靭性とIT産業の競争力

インドのGDPに占める内需の割合は約6割、輸出は2割に過ぎず、トランプ関税によるGDPへの影響はわずか0.1%と試算されています。この内需主導型の経済構造こそが、外部ショックに対する強靭性の源泉であり、他の新興国とは一線を画す最大の強みといえるでしょう。

さらに、世界的なAI投資ブームとDX需要の再加速により、インドのIT産業は新たな成長局面を迎えています。日米の大手企業がインドに研究開発拠点を相次いで設立し、半導体関連分野でも一大拠点化が進んでおり、中長期的な成長ドライバーとして期待が高まっています。

「メイク・イン・インディア」政策による製造業振興も着実に進展し、中国プラスワン戦略の受け皿としての役割が拡大しています。インフラ投資も2025年度予算の執行が順調に進んでおり、4-5月だけで年間予算の約20%が執行されるなど、政府の成長重視姿勢は鮮明です。

今こそ仕込み時と判断する3つの根拠

  • 格付け見通し「ポジティブ」が示す構造改革の成果
  • 企業利益成長率13.9%という堅調な収益力
  • 10年単位で見た圧倒的な成長ポテンシャル

格付け見通し「ポジティブ」が示す構造改革の成果

2024年5月、S&Pグローバル・レーティングスがインドのソブリン格付け見通しを「安定的」から「ポジティブ」に引き上げたことは、市場では意外に軽視されています。しかし、これは健全な経済ファンダメンタルズと構造改革の着実な進展が国際的に評価された証であり、中長期投資の観点からは極めて重要なシグナルです。

格付けがBBB+に引き上げられれば、多くの機関投資家の投資ユニバースから外れていた制約が解消され、世界中から巨額の資金流入が期待できます。実際、インド企業の自己資本利益率(ROE)は過去10年平均で中国や日本を大きく上回っており、財務基盤の健全性と経営効率の高さは既に証明済みです。

デジタル・インディア政策による電子政府化やオンライン教育の普及も順調に進み、生産性向上と透明性改善が同時進行しています。こうした構造改革の成果が徐々に顕在化することで、バリュエーションの再評価につながる可能性は十分にあるでしょう。

企業利益成長率13.9%という堅調な収益力

株価は短期的に大きく調整しましたが、インド企業の予想EPS成長率は今後2年間で年率13.9%と、依然として高水準を維持しています。これは世界の主要市場と比較しても突出した数字であり、株価の調整は業績悪化ではなく、センチメントの悪化によるものであることを示唆しています。

2025年1-3月期の企業業績も、インド市場全体で10%の最終増益を達成するなど、関税引き上げの逆風下でも底堅さを保っています。金融、不動産、消費財セクターを中心に業績改善が続いており、政策転換による恩恵も今後顕在化してくることが期待されます。

予想PERが18倍まで低下したことで、成長率との比較でみた割安感も徐々に出てきました。過去の経験則では、PERが20倍を下回った局面でのインド株投資は、3年以上の投資期間で見れば高い確率で良好なリターンを生み出しています。

10年単位で見た圧倒的な成長ポテンシャル

人口ボーナス期が2040年頃まで続くインドは、若年労働力の増加と中間所得層の拡大により、今後10-20年にわたって高成長を維持する可能性が高いと考えられます。IMFや世界銀行も2025年以降のGDP成長率を6-7%と予測しており、中国の減速が鮮明になる中で、相対的な優位性はむしろ高まっているのです。

2027年にはGDPで世界第3位、2030年代には5兆ドル経済への到達が視野に入っており、グローバル株式指数におけるインドの比率も現在の2%から大幅に上昇することが予想されます。フィンテックやeコマース分野でのユニコーン企業も続々と誕生しており、イノベーション創出力でも中国に迫る勢いを見せています。

気候変動対策や再生可能エネルギー分野でも、政府の積極投資により世界有数の市場に成長する可能性を秘めています。短期的な調整に惑わされず、10年単位の視点で投資すれば、インド株は依然として最も魅力的な投資対象の一つといえるでしょう。

インド株投資についてのまとめ

トランプ関税や海外投資家の売却により「インド株やめとけ」という声が高まっていますが、その裏側には明確な投資機会が潜んでいます。国内投資家の積極買い、利下げサイクル突入、内需経済の強靭性という3つの買い材料は、中長期的な上昇相場の土台を着実に形成しているのです。

この記事の要点を復習しましょう。

  1. 海外投資家の総悲観の裏で国内投資家は過去最高の買い越しを記録
  2. 5年ぶりの利下げサイクル突入で成長再加速シナリオが現実味
  3. GDP成長率6-7%、企業利益成長率13.9%という基礎体力は健在
  4. 内需6割の経済構造がトランプ関税の影響を最小限に抑制
  5. 格付け見通し「ポジティブ」への引き上げが示す構造改革の成果
  6. 人口ボーナスとIT産業の競争力が支える10年単位の成長ストーリー

投資の世界では「人の行く裏に道あり花の山」という格言があるように、総悲観の時こそ最大のチャンスが潜んでいることが多いものです。あなたも勇気を持って一歩を踏み出せば、数年後には今の決断を誇らしく振り返ることができるかもしれません。

参考リンク

応援のシェアをお願いします!
  • URLをコピーしました!