白石和彌監督の映画『死刑にいたる病』をご覧になって、あの印象的なシーンの撮影場所がどこなのか気になっていませんか。阿部サダヲさんが演じる連続殺人鬼・榛村が営んでいたパン屋や、重要なシーンで登場する水門など、作品の世界観を形作る数々のロケ地は、観る者の心に強烈な印象を残したことでしょう。
そこで今回は、『死刑にいたる病』の撮影に使用されたロケ地について、公式情報や信頼できる情報源を基に詳しくご紹介していきます。実際に訪問できる場所も多数含まれているため、映画ファンの方にとって聖地巡礼の参考にもなる内容となっています。
『死刑にいたる病』の主要撮影地域
- 宇都宮市を中心とした栃木県内での撮影
- 栃木県が全面的にサポートした作品
- 公共施設から商業施設まで多様なロケ地
宇都宮市を中心とした栃木県内での撮影
映画『死刑にいたる病』の撮影は、栃木県の全面的な協力のもと、県内各地で実施されました。栃木県フィルムコミッションの公式記録によれば、宇都宮市をメインロケーションとして、日光市や佐野市など県内の複数の都市が撮影地として活用されています。
この作品における栃木県という地域選択は、単なる利便性だけではない深い意味を持っていると考えられます。地方都市特有の静けさと不穏さが同居する雰囲気が、連続殺人事件を扱うこの作品の世界観と見事に調和し、観客を物語の中へと引き込む効果を生み出しているのです。
白石和彌監督は、これまでも『孤狼の血』などでリアリティを追求したロケーション選びで知られており、本作でもその手腕が存分に発揮されています。宇都宮市周辺の若者が行き交う繁華街から、郊外の静かな住宅地まで、対比的な場所を効果的に使い分けることで、物語に奥行きを持たせることに成功していると言えるでしょう。
栃木県が全面的にサポートした作品
栃木県は『死刑にいたる病』の撮影に対して、栃木県フィルムコミッションを通じて積極的な支援を行いました。県庁舎をはじめとする公共施設の使用許可から、撮影場所の選定サポートまで、行政が映画制作に協力的な姿勢を示したことが、作品の完成度向上に大きく貢献しています。
このような地域と映画制作の良好な関係は、単に撮影がスムーズに進むというメリットだけではありません。地元の人々の理解と協力があってこそ、リアルで説得力のある映像が撮影できるのであり、本作の緊張感あふれる画面の背景には、そうした地域社会の支えがあったことを忘れてはならないでしょう。
撮影後、この作品は栃木県の映画文化振興にも貢献し、地域の新たな魅力発見のきっかけともなりました。映画を通じて栃木県を訪れる人が増えれば、文化的な交流が生まれ、地域活性化にもつながるという好循環が期待できます。
公共施設から商業施設まで多様なロケ地
本作の撮影では、栃木県本庁舎という公的機関の建物から、オリオンスクエアのような市民の憩いの場まで、実に多様な施設が使用されました。こうした多彩なロケーションの組み合わせが、物語に現実味を与え、観客が作品世界に没入しやすい環境を作り出しているのです。
特に印象的なのは、日常的な空間が突如として不穏な場面の舞台となる瞬間です。普段は何気なく通り過ぎる場所が、カメラのアングルや演出によって全く異なる表情を見せるという映画の魔法が、ここでは遺憾なく発揮されていると感じます。
また、栃木県総合運動公園といったスポーツ施設まで撮影に活用されており、制作チームの綿密なロケーション・ハンティングの成果が窺えます。作品に必要なあらゆるシーンを県内で撮影できたことは、製作上の効率性だけでなく、映画全体に一貫した空気感をもたらすことにもつながったはずです。
パン屋「ロシェル」の撮影場所
- カフェインクブルーが撮影に使用された
- オリオンスクエア隣接の特徴的な外観
- 現在も営業中で訪問可能
カフェインクブルーが撮影に使用された
作中で榛村大和が店主を務めるパン屋「ロシェル」のロケ地として使用されたのは、宇都宮市江野町にある「カフェインクブルー(Cafe Ink Blue)」です。この店は実際にはパン屋ではなくカフェですが、撮影時には映画の設定に合わせて内装が調整され、近隣住民の憩いの場という「ロシェル」のイメージを見事に表現する舞台となりました。
映画公式アカウントが公開した撮影記録の写真では、阿部サダヲさんをはじめとする出演者たちが店内で撮影に臨む様子が映し出されています。喫茶機能を備えたこの店の温かみのある雰囲気は、表面的には善良な市民として振る舞う榛村のキャラクター造形と絶妙にマッチしており、後に明かされる真実との落差がより際立つ効果を生んでいます。
実際にこのカフェを訪れたファンからは、映画のポスターや出演者のサイン色紙が店内に飾られており、撮影時の雰囲気を感じられると好評です。映画を観た後でこの場所を訪れると、作品の世界に再び浸ることができ、また違った角度から物語を味わえる貴重な体験となるでしょう。
オリオンスクエア隣接の特徴的な外観
カフェインクブルーは、宇都宮市の中心市街地にあるオリオンスクエアのすぐ隣に位置しています。大谷石で造られた外壁とブルーの扉が印象的で、通りを歩いているだけでも一目でそれとわかる独特の佇まいをしており、映画の中でも強い存在感を放っていました。
東武宇都宮駅東口から徒歩約2分というアクセスの良さも、この店の大きな魅力です。映画ファンが聖地巡礼をする際にも訪れやすく、オリオン通りを散策しながら立ち寄れる立地条件は、映画の舞台を実際に体験したい方にとって理想的な環境と言えるでしょう。
この店にはピアノが備わっており、時には演奏会なども催されるという文化的な一面を持つ空間です。こうした芸術的な雰囲気を纏う場所だからこそ、榛村のような知的で文化的な雰囲気を装う人物が営む店として、説得力のある演出が可能になったのかもしれません。
現在も営業中で訪問可能
カフェインクブルーは撮影終了後も通常営業を続けており、映画ファンならずとも気軽に訪れることができます。営業時間は10時30分から18時30分まで(ライブ開催時は22時まで)で、定休日は月曜日となっているため、訪問を計画される方は事前に確認されることをお勧めします。
メニューはコーヒーをはじめとするドリンク類から、カレーやパスタなどの軽食まで幅広く揃えられています。特に焼き立てのワッフルが人気商品とのことで、映画の余韻に浸りながら美味しいスイーツを楽しむという贅沢な時間を過ごせるはずです。
店のオーナーは撮影時の様子を写真で保存しており、来店客に見せてくださることもあるそうです。実際の撮影現場の雰囲気や、俳優陣とスタッフの様子を知ることができれば、映画への理解と愛着がさらに深まり、作品を二倍楽しめることでしょう。
水門や大学など印象的なロケーション
- 榛村の家近くの水門が作品の方向性を決定
- 大学シーンは雅也の鬱屈を表現
- 正光寺での撮影も実施された
榛村の家近くの水門が作品の方向性を決定
映画のオープニングで登場する水門のシーンは、白石和彌監督によれば作品全体の方向性を決定づけた重要なロケーションだったと語られています。榛村が何かをばらまく儀式のような行為が映し出されるこの場面は、蒼く冷たい色調で撮影され、物語の不穏な空気を象徴的に表現する印象的なシーンとなりました。
この水門は榛村の家の近くという設定で撮影されましたが、具体的な場所については詳細が公開されていません。おそらく制作側の配慮として、プライバシーや現地への過度な訪問を避けるために非公開としているのでしょうが、だからこそ映画の中でのみ存在する特別な場所として、観客の記憶に深く刻まれることになります。
編集を担当された加藤ひとみさんは、水門での榛村の行動と、祖母を送る雅也の姿を交錯させる手法について、過去と現在をつなぐ二人の運命的な結びつきを表現する狙いがあったと述べています。こうした演出の工夫が、単なる場所の記録を超えて、ロケーション自体が物語を語る装置となる瞬間を生み出しているのです。
大学シーンは雅也の鬱屈を表現
主人公の筧井雅也が通う大学のシーンも、作品において重要な役割を果たしています。理想とは程遠いランクの大学に通い、鬱屈した日々を送る雅也の心情を表現するため、どのような大学がロケ地として選ばれたのかは興味深いところですが、具体的な大学名は公表されていません。
この情報の非開示も、おそらく撮影に協力してくれた教育機関への配慮と思われます。実在の大学が「理想とは程遠いランク」という設定で映画に登場することは、その大学の関係者にとって必ずしも歓迎されるものではないため、制作側の慎重な判断があったのでしょう。
それでも、大学という場所が持つ若者特有の不安定さや焦燥感は、映像を通してしっかりと伝わってきます。キャンパスを歩く学生たちの姿や、講義室の様子といった何気ない日常の風景が、雅也の孤独と疎外感を際立たせる効果的な背景となっているのです。
正光寺での撮影も実施された
宇都宮市雀の宮にある天台宗の寺院・正光寺も、『死刑にいたる病』のロケ地として使用されました。寺院の公式フェイスブックページには、撮影時の様子や俳優陣・スタッフとの交流についての投稿があり、地域に根ざした寺院が映画制作に協力した温かいエピソードを知ることができます。
寺院という場所は、生と死、あるいは罪と赦しといったテーマを視覚的に表現するのに適した空間です。連続殺人という重いテーマを扱う本作において、正光寺がどのようなシーンで使用されたのかは明確ではありませんが、おそらく物語に深みを与える重要な場面だったのではないかと推察されます。
また、寺院側も撮影を「貴重な機会」として前向きに受け止めており、映画制作と地域社会の良好な関係を示す一例となっています。こうした相互理解と協力があってこそ、映画は単なる娯楽を超えて、地域文化の一部としても機能していくのだと感じさせられます。
『死刑にいたる病』のロケ地についてのまとめ
映画『死刑にいたる病』は、栃木県各地の魅力的なロケーションを舞台に撮影された作品です。白石和彌監督の卓越した演出と、地域社会の協力が相まって、忘れがたい映像体験を生み出すことに成功しています。
この記事の要点を復習しましょう。
- 主な撮影地は宇都宮市を中心とした栃木県内で、日光市や佐野市なども含まれる
- パン屋「ロシェル」のロケ地はカフェインクブルー(宇都宮市江野町)で現在も営業中
- 印象的な水門のシーンが作品の方向性を決定づけた重要なロケーション
- 栃木県本庁舎、オリオンスクエア、栃木県総合運動公園なども撮影に使用
- 正光寺(宇都宮市雀の宮)でも撮影が行われた
- 地域社会と制作チームの良好な関係が作品の質を高めた
これらのロケ地を実際に訪れることで、映画の世界をより深く体験できるはずです。栃木県の魅力を再発見しながら、作品への理解と愛着を深めていく聖地巡礼の旅は、映画ファンにとって特別な思い出になることでしょう。
