のぞみのグリーン車以外で車内販売が終了した理由と対処法

新幹線に乗車した際、「車内販売はまだ来ないだろうか」と待っていたのに、いつまで経っても現れず戸惑った経験はありませんか。実は、東海道新幹線や山陽新幹線の「のぞみ」では、普通車での車内販売がすでに終了しているのです。

そこで今回は、多くの旅行者や出張者に親しまれてきた車内販売がなぜ終了したのか、その背景にある複雑な事情を詳しく解説します。さらに、車内販売がない状況でどのように飲食物を入手すればよいのか、実践的な対処法もご紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。

のぞみの車内販売終了の経緯

  • 東海道新幹線での車内販売終了時期
  • 山陽新幹線での車内販売終了時期
  • グリーン車でのサービス継続状況

東海道新幹線での車内販売終了時期

東海道新幹線では、2023年10月31日をもって「のぞみ」と「ひかり」の全号車で実施していた車内ワゴン販売が終了しました。 この突然の発表は2023年8月に行われ、多くの利用者に驚きと残念さをもたらしたのです。

かつて東海道新幹線の車内販売は、パーサーと呼ばれる販売員がワゴンを押して車内を巡回し、弁当や菓子、飲み物、そして名物のアイスクリームなどを提供していました。特に「シンカンセンスゴイカタイアイス」として親しまれたドライアイスで冷やされた硬いアイスは、新幹線旅行の楽しみの一つとして多くの人の記憶に残っています。

この終了により、東京から新大阪までの約2時間半、あるいは東京から博多までの約5時間という長時間の移動中、普通車利用者は車内で飲食物を購入することができなくなりました。新幹線旅行における一つの文化が失われたと感じる人も少なくないでしょう。

山陽新幹線での車内販売終了時期

山陽新幹線では、東海道新幹線より約半年遅れの2024年3月15日をもって、普通車での車内販売が終了しました。 東海道新幹線での終了が既定路線となったことで、山陽新幹線でも同様の対応が取られることは予想されていました

終了後は、16両編成の「のぞみ」と「ひかり」のグリーン車のみでワゴンによる車内販売が継続されています。 ただし、姫路駅や西明石駅を始発・終点とする列車では、この車内販売も対象外となっているため注意が必要です。

興味深いのは、山陽新幹線でも東海道新幹線と同様の理由で終了に至ったことですが、その背景には単なる収益性の問題だけでなく、社会全体の構造的な変化があったと考えられます。人手不足や利用者の行動パターンの変化は、一つの路線だけの問題ではなく、鉄道業界全体が直面している課題なのです。

グリーン車でのサービス継続状況

東海道新幹線では、2023年11月1日からグリーン車を対象とした「東海道新幹線モバイルオーダーサービス」が開始されました。 このシステムでは、グリーン車の各座席に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取り、商品を注文するとパーサーが座席まで届けてくれます。

モバイルオーダーサービスは、従来のワゴン販売とは異なり、好きなタイミングで注文できるという利点があります。ワゴンが来るのを待つ必要がなく、また商品が売り切れて買えないという心配も減ったため、一部の利用者からは好評を得ているようです。

ただし、モバイルオーダーサービスで提供される商品は、従来の車内販売よりも種類が少なく、特に弁当類の販売はなくなっています。グリーン車を利用することで車内サービスは受けられるものの、かつてのような充実した品揃えは期待できない状況となっており、新幹線旅行の楽しみ方自体が変わりつつあると言えるでしょう。

のぞみの車内販売が終了した主な理由

  • 利用者の減少と売上の低迷
  • 深刻化する人手不足への対応
  • 駅構内サービスの充実と消費行動の変化

利用者の減少と売上の低迷

車内ワゴン販売の売上は1990年代をピークに右肩下がりで、2018年度の売上は2008年度と比べて約45パーセント減少しました。 この間、東海道新幹線の輸送量は16パーセントも増加していたにもかかわらず、車内販売の利用者だけが激減していたのです。

実際に新幹線に乗車してみると、車内販売のワゴンが通っても購入する人の姿を見かけることは少なくなっていました。多くの乗客は事前に駅の売店やコンビニエンスストアで飲食物を購入し、それを車内に持ち込むようになっていたため、車内販売の存在意義そのものが薄れていったと考えられます。

車内販売を運営するJR東海子会社の担当者は、採算を取るのが困難な状況だと明言しており、実態として純粋な物販ビジネスとしては既に成立しにくい状況でした。 パーサーの人件費は車掌業務の一端を担うことで賄っていたといい、物販収入だけでは事業として維持できない状態だったことが窺えます。

深刻化する人手不足への対応

JR東海は車内販売終了の理由として「将来にわたる労働力不足への対応」を挙げています。 販売員の確保が困難な状況で、人員の不足は深刻でした。

車内販売の仕事は、16両編成で約400メートルにも達する列車内を重いワゴンを押しながら何度も往復する肉体的にハードな労働です。さらに勤務時間帯や曜日も不規則で、決して楽な仕事とは言えないため、人材確保が困難になっていたと考えられます。

東海道新幹線では1時間あたり最大12本の「のぞみ」を運行できる過密ダイヤとなっており、列車本数の増加により車内販売員を乗車させる列車を絞らざるを得ない状況でした。 人手不足と過密ダイヤの相乗効果により、十分なサービスを提供することが物理的に不可能になっていたのです。

駅構内サービスの充実と消費行動の変化

のぞみ停車駅の改札内店舗の売上は2008年度から2018年度の間に16パーセント増加し、輸送量の伸びと一致しています。 この対照的な数字は、利用者の購買行動が車内から駅構内へと明確にシフトしたことを示しています。

近年、東京駅や新大阪駅などの主要駅では駅ナカ商業施設が大幅に充実し、多様な飲食物や土産物を購入できるようになりました。車内販売で扱える商品数には限りがあるのに対し、駅構内の店舗では圧倒的に豊富な品揃えを提供できます。

また、JR東海は「静粛な車内環境を求めるご意見」も終了理由の一つに挙げています。 ワゴンが通る音や販売員の声を煩わしく感じる乗客が増えたことも、時代の変化を象徴していると言えるでしょう。

のぞみ利用時の飲食物入手の対処法

  • 事前購入の重要性と購入場所の選択
  • ホーム設置の自動販売機の活用法
  • グリーン車モバイルオーダーの利用方法

事前購入の重要性と購入場所の選択

車内販売がなくなった現在、最も確実な対処法は乗車前に駅で飲食物を購入しておくことです。特に東京駅や新大阪駅などの主要駅では、改札内に多数の売店や飲食店があり、弁当から飲み物、デザートまで幅広い商品を選ぶことができます。

購入のタイミングとしては、改札を通過した直後よりも、ホームに降りる前の駅構内で済ませておくのが賢明でしょう。ホームでは列車の発車時刻が迫っていることが多く、慌てて購入すると選択肢が限られたり、買い忘れが生じたりする可能性があるためです。

また、静岡駅や浜松駅など「のぞみ」が通過する駅周辺からの利用者は、最寄り駅で購入してから乗車することをお勧めします。大きな荷物を持っている場合は特に、東京駅や新大阪駅の混雑した構内で買い物をするよりも、余裕を持って準備できるはずです。

ホーム設置の自動販売機の活用法

JR東海は車内販売終了に伴い、「のぞみ」停車駅のホームにドリップコーヒーとアイスクリームの自動販売機を順次設置しました。 コーヒーの自動販売機は45台、スジャータアイスクリームが21台、サーティワンアイスクリームが20台が設置されています。

コーヒーには「新幹線のぞみブレンド」「新幹線ひかりブレンド」「新幹線こだまブレンド」「ドクターイエローブレンド」といった東海道新幹線特別仕様の商品が用意され、全13種類を取り揃えています。 価格はコーヒーが300円から、アイスクリームが340円からとなっています。

ただし、これらの自動販売機の活用には注意点があります。自動販売機のアイスクリームは、車内販売時代のようにドライアイスで冷やされた極度に硬い状態ではなく、購入後時間が経つと溶けやすくなります

グリーン車モバイルオーダーの利用方法

グリーン車を利用する場合は、座席からモバイルオーダーサービスで飲食物を注文できます。グリーン車の各座席に設置されたQRコードをスマートフォンで読み取り、ポータルサイトにアクセスして列車番号、号車、座席番号、降車駅を入力すれば注文可能です。

利用者からは「到着時間の目安がわかる」「早くて便利」「欲しい時に頼みたいという需要に応えられた」といった好意的な評価が多いようです。 ワゴンが来るタイミングを待つ必要がなく、自分の好きなタイミングで注文できる点は、従来の車内販売にはない利点と言えます。

支払いは商品を受け取る際にパーサーに現金で行う仕組みとなっており、キャッシュレス決済には対応していません。そのため、グリーン車でモバイルオーダーを利用する予定がある場合は、あらかじめ現金を準備しておく必要がある点に注意しましょう。

のぞみの車内販売についてのまとめ

長年親しまれてきた東海道・山陽新幹線「のぞみ」の車内販売は、時代の変化とともにその役割を終えました。利用者の減少、人手不足、消費行動の変化という複合的な要因が重なり、サービスの継続が困難になったのです。

この記事の要点を復習しましょう。

  1. 東海道新幹線では2023年10月31日、山陽新幹線では2024年3月15日に普通車での車内販売が終了した
  2. 売上の大幅な減少と深刻な人手不足が主な終了理由となった
  3. 駅構内の商業施設充実により利用者の購買行動が車内から駅へシフトした
  4. 事前に駅で飲食物を購入しておくことが最も確実な対処法である
  5. のぞみ停車駅のホームにはコーヒーやアイスの自動販売機が設置されている
  6. グリーン車ではモバイルオーダーサービスで車内注文が可能である

車内販売の終了は寂しく感じられるかもしれませんが、事前準備をしっかり行えば快適な新幹線旅行を楽しむことができます。むしろ駅構内での豊富な選択肢から好みの商品を選べるようになったと前向きに捉え、新しいスタイルの新幹線利用を楽しんでみてはいかがでしょうか。

参考リンク

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