魚豊さんの傑作漫画「チ。-地球の運動について-」で強烈な印象を残すバデーニの最期について、多くの読者が衝撃を受けています。第二章の主人公の一人として活躍した修道士バデーニは、なぜ死亡することになったのでしょうか。
そこで今回は、バデーニの死亡が何話で描かれたのか、その死因と理由、そして作品全体における意味について詳しく解説します。バデーニの壮絶な最期とその影響を知ることで、「チ。」という作品の深さをより理解できるはずです。
バデーニの死亡について
- バデーニが死亡したのは何話なのか
- バデーニの死因と処刑に至る経緯
- バデーニが死亡することになった根本的な理由
バデーニが死亡したのは何話なのか
バデーニは原作漫画の5巻32話で死亡しています。アニメ版では第14話「今日のこの空は」でバデーニの処刑シーンが描かれました。
この回は2024年12月28日に放送され、多くの視聴者が涙を流した感動的なエピソードとして話題になりました。バデーニはオクジーと共に絞首台に立ち、首にロープを掛けられた状態で処刑台の床が開いて落下し、死亡しました。
処刑の直前まで、バデーニとオクジーは満天の星空を見上げながら最後の会話を交わします。アニメでは中村悠一さんの名演技により、バデーニの最期がより一層ドラマティックに描かれています。
バデーニの死因と処刑に至る経緯
バデーニは地動説を支持する副助祭として異端者とされ、最終的に絞首刑に処されたのが死因です。具体的な経緯を辿ると、まずバデーニとオクジーが地動説の研究を完成させた直後に、衝撃的な事実が判明します。
協力者であったヨレンタの父が異端審問官ノヴァクだったのです。勘の鋭いノヴァクは2人が潰したはずの地動説の信奉者であることを見抜き、すぐさま馬車でアジトへ迫り来ました。
バデーニは最初「資料は燃やした」と証言しましたが、目の前で拷問されるオクジーの姿を見かねて隠し場所を告白してしまいました。この自白により地動説の研究資料が教会側に発見され、二人の運命が決定的となったのです。
バデーニが死亡することになった根本的な理由
バデーニが死亡した根本的な理由は、地動説という科学的真理を追求する信念を貫いたことにあります。バデーニは「自分の人生を特別なものにする」という信念を持ち、歴史に名を残したいという野望から地動説の研究に没頭しました。
バデーニは以前所属していた教会で、禁書を読んだ罪により懲罰を受けて目玉を蝋で焼かれていました。それでも知識への探求心を抑えることができず、田舎の教会に左遷された後も地動説の研究を続けたのです。
15世紀のヨーロッパにおいて、地動説は教会の教義に反する危険思想でした。バデーニは自分の研究が命に関わる危険なものであることを理解していながらも、真理への渇望を止めることができませんでした。
バデーニの死が物語に与えた影響
- バデーニが用意した「予防策」とその内容
- 後世への地動説の継承システム
- バデーニの死が示す作品のテーマ
バデーニが用意した「予防策」とその内容
処刑の直前にバデーニがオクジーに話した「予防策」の答えが5巻第35話に描かれています。バデーニと一緒に働いていた助祭のクラボフスキは、ある日教会の本棚の中に差出人不明の手紙を発見しました。
その手紙にはルクレティウスの詩の一節と共に、「貧民が訪ねて来たら応対してほしい」という切実な願いが書かれていました。数日後、オクジーから施しのパンをもらえなくなった貧民たちが、バデーニからの言いつけ通りにクラボフスキのもとを訪れました。
貧民たちは次々と自分の頭髪を剃り、その頭に刺青として文章が刻まれているのが明らかになります。全部で60ページからなるその内容は、オクジーが個人的に書いていた本でした。
後世への地動説の継承システム
バデーニは実はオクジーの手記をこっそり見ており、模写を作成して教会に保管していました。バデーニ自身がオクジーが書いた本の内容に感動し、この本は後世に残す価値があると判断したのです。
地動説に関する学術的な記述ではないものの、本であるが故の地動説の感動は伝わる可能性があると見越しての作戦でした。バデーニは「この世に何かを残して、全く知らない他者に投げるのは、私にとってなんら無意味で無価値だ」と自覚していながらも、最終的に歴史にとっては無益ではないという考えに至りました。
こうして、地動説の感動は守られ、後世に受け継がれていくこととなりました。バデーニの死は単なる終わりではなく、新たな始まりでもあったのです。
バデーニの死が示す作品のテーマ
バデーニの死は科学的探求と宗教的権威の間に横たわる深い対立を象徴するエピソードとして機能しています。彼の死を通じて、科学的真理と信念、そしてそれを守るために払う犠牲という普遍的なテーマが鮮明に描き出されています。
「チ。」という作品の主人公は具体的な誰かではなく、「地球の運動について」の好奇心や、知りたいという欲求そのものです。ラファウは好奇心や知性は「流行り病のように増殖する」と語っており、そうして増殖した”知(チ)”が、”血(チ)”肉に宿り、”地(チ)”球を動かしていくのです。
バデーニが拷問に耐え抜き、真理を追求する信念を貫いた姿勢は、物語の核心的なテーマである「信念と犠牲」を具現化するものです。彼の死は現代社会においても響く、普遍的な価値を持つ出来事として描かれています。
バデーニの人物像と最期の意味
- バデーニの性格と能力の特徴
- オクジーとの関係性の変化
- バデーニの最期に込められたメッセージ
バデーニの性格と能力の特徴
バデーニは並外れた計算力と知識量を持っている頭脳明晰な修道士で、桁の多い計算をなんの機械も使わずに暗算で解いて見せました。彼は貪欲に知を求め、好奇心と知識欲を抑えることのできない人物として描かれています。
しかし、バデーニには性格的な欠点もありました。彼は傲慢で自己中心的で、身分の低い者や能力の劣る者を下に見ており、教会の規律を何度も破ったりして共同生活において不向きであるとされ田舎の教会に左遷されました。
トンスラ、鼻と口に残る大きな傷跡、隻眼と属性モリモリでも、少しも損なわれることのない美貌の持ち主で、元の顔はボッティチェリが描く女性のように優美なのに、その口から出るのは傲慢で辛辣な言葉というギャップが魅力的です。
オクジーとの関係性の変化
素晴らしいコンビ感を持つ二人として描かれており、代闘士でありとびきり目が良く腕の立つ相手を見分けることも容易いが、超ネガティブでトラウマ的に星空を見ることができないオクジーと、目を焼かれ視力を失った片目に眼帯をしているが切れ者で高慢で真理に真っ直ぐ突き進む修道士のバデーニの対比が魅力的でした。当初バデーニはオクジーを単なる雑用係として利用しようとしていましたが、次第にその関係性が変化していきます。
ヨレンタの協力により貴重な資料を得た後では、バデーニはヨレンタに「後日我々が捕まったとしても君は説とは無関係だと貫け」と言い、異端審問官に詰問されても「協力者はいません」とヨレンタをかばいました。敵の追っ手の時間稼ぎをすると言ったオクジーにバデーニが祈りを捧げたり、バデーニの拷問材料にオクジーが使われ彼の目が潰されようとしたときにバデーニが折れて真実を吐いたりしました。
最期は二人並んで絞首台に立って吊るされる姿は、バディとして最高の関係性を示していました。このような経緯から、多くの読者がこの二人の絆に深く感動したのです。
バデーニの最期に込められたメッセージ
バデーニの言葉を聞いたオクジーは「最期に期待しがいのある」と言って初めて前向きな言葉を吐きました。これは、それまで超ネガティブだったオクジーが、バデーニとの出会いと地動説への理解を通じて変化したことを示しています。
自供したオクジーに対し、死ぬ怖さやリスクを背って生きる辛さを伝えたバデーニの言葉がとても印象的で、地動説が来世に受け継がれる事を期待しつつ、自らの命を捨てる覚悟を示したバデーニやオクジーの思いが多くの読者に伝わりました。最終的に歴史にとってはそれは無益ではないという考えに至り、後世に地動説を託すバデーニの姿は、個人的な野心を超えた大きな使命感を感じさせます。
彼の死は、知識と信念を守るために命を懸ける意味を問いかける深いメッセージを含んでいます。バデーニの最期を通じて、作者は真理を追求することの尊さと困難さを読者に伝えているのです。
バデーニの死亡についてのまとめ
バデーニの壮絶な最期は、「チ。」という作品の核心を象徴する重要なエピソードでした。彼の死を通じて、真理を追求することの意味と代償が深く描かれています。
この記事の要点を復習しましょう。
- バデーニは5巻32話(アニメ第14話)で絞首刑により死亡した
- 地動説の研究が発覚し異端者として処刑されたのが死因
- 死の直前まで地動説を後世に伝える「予防策」を用意していた
- オクジーとの関係性は利用から真の友情へと変化した
- 彼の死は科学と宗教の対立を象徴する重要な場面
- バデーニの犠牲により地動説の感動が後世に受け継がれた
バデーニの死亡シーンは多くの読者・視聴者に深い感動を与え、「チ。」という作品の魅力を象徴するエピソードとなっています。彼の信念と犠牲は、現代を生きる私たちにとっても大きな意味を持つメッセージとして心に響き続けるでしょう。